ブログ アプリマーケターなら知っておきたいeCPIベンチマーク

アプリマーケターなら知っておきたいeCPIベンチマーク

市場が変化して競争力が激化する今日のグローバル経済においてアプリマーケティングを成功させるには、「eCPI(有効インストール単価)」 は重要な指標の一つで、的確に把握することが不可欠です。アプリ開発者や広告主、マーケターは、eCPIによって新規ユーザー1人あたりの獲得コストを明確に把握したり、投資収益率(ROI)を計測して予算配分やキャンペーン戦略を打ち立てることができるようになります。つまり、eCPIを理解することで、マーケティング予算を効果的に活用してキャンペーンの効率価値を高めることができるのです。

アプリ指標に焦点を当てたブログシリーズとして、継続率アプリセッション顧客生涯価値(LTV)を紹介しましたが、4回目となる今回は「eCPI」を解説します。 その重要性の背景を掘り下げて、さまざまなプラットフォーム、地域、カテゴリーにわたる業界のベンチマーク(英語)を分析し、eCPIの数値を下げてマーケティングキャンペーンを強化するためのデータに基づいた実用的な戦略をご紹介します。

定義

eCPI(有効インストール単価)

eCPI(有効インストール単価)は、キャンペーン実施後の新規ユーザーを獲得するための実際のコストを表します。広告主がキャンペーン実施前にアドネットワークに固定料金で支払う従来の「インストール単価(CPI)」とは異なり、eCPIの場合は、アプリがユーザーによってインストールされると、オーガニックユーザーによる差異やマーケティングキャンペーンによるバイラル効果などを加味し、実際に発生したコストを反映します。

eCPIは、アプリのソーシャルシェア(情報の拡散)の指標となる「Kファクター」も考慮します。Kファクターは既存ユーザーが何人の新たなユーザーをもたらすかを評価するため、CPIでは見逃してしまうようなオーガニックトラフィックからの流入による成長の可能性を把握することができます。バイラル効果という要素を含めることによってeCPIの計算は複雑になりますが、インストール単価をより正確に算出することが可能となります。

eCPIの値

eCPIの重要性

eCPIを理解することで、広告主は予算をより効率的に割り当て、インストール単価を下げるためにキャンペーンを最適化したり、さまざまなユーザー獲得(UA)チャネルにおけるパフォーマンスを比較することができるようになります。ユーザーの行動に関係なく広告のインプレッションに基づいて費用が発生する「1000回表示あたりの広告費用(CPM)(英語)」のようなコストモデルに対し、eCPIではアプリのインストールが発生した場合にのみ広告主に費用が発生します。eCPIはユーザーの意図の高さを示し、また、関心のないユーザー層に対して予算を投資するリスクを減らすことができるため、非常に有益です。

eCPIはユーザーの獲得コストを計測する上で非常に信頼性の高い指標である一方、ユーザーがダウンロードした後にアプリを利用し続けることを保証するものではありません。高いインストール率が、必ずしも高いエンゲージメント収益化に繋がるわけではありません。そのため、eCPIは、顧客生涯価値(LTV)広告費用回収率(ROAS)などの他の重要な指標と併せて考慮しなくてはなりません。LTVは、一定の期間にわたってユーザーから生み出された収益の合計を計測し、そのユーザーの獲得における長期的な価値に関するインサイトを提供します。また、ROASは、コストに対して広告から得られた収益を計算し、キャンペーンの収益性を直接的に計測します。これらの指標を組み合わせることで、キャンペーンの全体的な影響をより正確に評価し、より適切にデータに基づいた意思決定を行うことができるようになります。

さらに、eCPIは変数により変動する可能性があるため、広告主やマーケターは、市場の状況、競争のレベル、シーズナリティ(季節要因)による需要などに基づいたコスト効率を維持するために、戦略を定期的に見直して調整する必要があります。

eCPIの計算式

eCPIの計算方法

従来のCPI(インストール単価)はマーケティング予算の合計をキャンペーンによって発生したインストール数で割って計算するため、eCPI(有効インストール単価)を理解するには、まずCPIに注目する必要があります。CPIの計算式は次のとおりです。

CPI(インストール単価)= マーケティング費用の合計 ÷ インストール数

例えば、コストが5,000ドルであるモバイル広告によって2,000のインストールを獲得した場合のCPIは、5,000ドルを2,000で割り、インストールあたり「2.5ドル」となります。この指標は、ペイドチャネルを介したユーザー獲得(UA)コストを即席で把握するのに役立ちます。

一方、eCPIは、オーガニックなアプリの拡散を意味するバイラル係数である「Kファクター」を含めることで、計算をさらに深め、より詳しいUAコストの全体像を示すことができます。eCPIの計算式は以下のとおりです。

eCPI = CPI ÷ Kファクター

CPIが5ドルで、新規ユーザー10人ごとにユーザーが1人追加される場合、Kファクターは、「追加されたユーザー数(1)」を「追加に必要となったユーザー数(10)」で割って算出するため、1.1となります。追加されたユーザーは新規ユーザー全体に対する割合となるため、計算式は次のとおりです。

Kファクター = 1 +(1 ÷ 10)= 1 + 0.1 = 1.1

このKファクターをeCPIに含めると、以下のとおりです。

5ドル ÷ 1.1 = 4.55ドル

eCPIを計算するもう1つの簡単な方法は、総広告費用をペイドとオーガニックの両方を含むインストール数の合計で割ることです。

eCPI = 広告費用の合計 ÷ インストール数の合計

eCPIからは貴重なインサイトが得られますが、Kファクターを正確に計測するには適切なツールが必要です。また、eCPIが指標として有効かどうかは、アプリのタイプ、業界、ターゲットとするユーザー層などの要因によって異なります。

eCPIに影響を与える要因

優れたeCPIとは

eCPIを把握するには、次のようなeCPIに影響を与える主な要素を理解することが重要です。

  • 位置情報:各地域のユーザーがもたらす価値のレベルは、社会経済的地位や消費習慣によって異なります。一般的に、富裕層の多い地域は消費額が高い可能性があることからeCPIも高い傾向があります。
  • 広告チャネル:MetaやXなどの主要なプラットフォームは、リーチが広いためコストが上がる可能性があります。一方、ニッチなチャネルは、よりターゲットが絞り込まれた費用対効果の高いUAに繋がります。重要なのは、幅広いリーチと精度の高いターゲティングのバランスをうまく組み合わせてeCPIを最適化することです。
  • アプリのカテゴリー、ジャンル:アプリのカテゴリーとジャンルは、eCPIに大きく影響します。特にゲームアプリの場合、高いユーザーエンゲージメントと収益化の可能性があるため、eCPIは高くなる傾向にあります。
  • 広告ユニットのコスト:広告ユニットのタイプや配置もeCPIに影響します。プレミアム広告の配置では、通常eCPIが上がりますが、より多くのインストールや潜在的に質の高いユーザーの獲得を促進することができます。広告ユニットのコストと期待できるユーザーエンゲージメントのバランスを取ることが重要です。
  • プラットフォーム(オペレーティングシステム):eCPIは、iOSプラットフォームとAndroidプラットフォームで異なり、特にゲーム以外のアプリでは、iOSのユーザー層はアプリ内での消費が高い傾向が見られるため、多くの場合、iOSのeCPIはAndroidよりも高くなります。プラットフォームに合わせて予算やターゲティング戦略を組む必要があります。
  • 市場のダイナミクス:競争やモバイルアプリに対する全体的な需要など、市場の状況もeCPIに影響します。一般的に、競争が激しい市場ではUAコストが増加するため、市場のトレンドを常に把握して、必要に応じて戦略に調整を加えることが不可欠です。

「優れたeCPI」とは、ユーザーの質と長期的な価値のバランスが取れていることを意味します。コストを最小限に抑えるだけではなく、エンゲージメントと収益化という観点から、獲得したユーザーの価値を確実に高めなくてはなりません。eCPIにLTV(顧客生涯価値)とROAS(広告費用回収率)を合わせることで、キャンペーンの効果を包括的に把握することができるようになり、持続可能な成長に向けたマーケティング戦略の最適化に繋げられます。

全体のデータ

世界のeCPI:AndroidとiOSの比較

Adjustは、2023年と2024年上半期の世界におけるプラットフォーム別のeCPIを分析しました。このデータを使用して、アプリのeCPIがグローバルな業界のベンチマークにどのように同調しているのかを評価します。

2023年、プラットフォーム(オペレーティングシステム)全体で、eCPIの中央値は1.27ドルでした。AndroidのeCPIは0.69ドルで、1.86ドルだったiOSよりもはるかに低い数値でした。これは、iOSユーザーの消費額が一般的に高く、インストールにおける競争が激しいことから、ユーザー獲得コストを増加させる必要性によるものです。

2024年上半期には、プラットフォーム全体でeCPIが低下して中央値は1.15ドルとなりました。プラットフォーム別で見ると、AndroidはeCPIが0.56ドルと低下したものの、低コストの傾向を維持しているのが見られましたが、一方のiOSは1.74ドルでした。

地域別データ

地域別eCPI

地域別にeCPIを分析すると、UAコストは世界全体で大きく異なることが明らかになりました。eCPIが最も高かったのは北米で、2023年は2.2ドル、2024年上半期は若干減少した2.12ドルでした。このeCPIの高さは、市場の競争力やユーザーの消費能力が比較的高いことを反映しており、価値のあるユーザーを獲得するためにはさらなる投資が必要である地域と言えるでしょう。

APACのeCPIは、2023年は0.64ドルだったのが2024年上半期は0.67ドルとなり、上昇はわずかで比較的安定していました。ヨーロッパのeCPIは、2023年は0.69ドルだったのが2024年上半期には0.66ドルとなり、わずかに減少しました。この一貫性から、マーケティングキャンペーンの計画や最適化において予測可能な状況を把握することができます。

eCPIが最も低かったのはLATAMとMENAで、LATAMは0.16ドルから0.18ドルにわずかに上昇し、MENAはいずれも0.15ドルでした。これらの地域は、費用対効果の高いユーザー獲得の機会があると見られる一方、コストの低さはユーザー全体の消費の減少に関連性がある可能性もあります。

世界のカテゴリー別データ

カテゴリー別eCPI

Adjustにて2023年と2024年上半期のさまざまなアプリカテゴリーのeCPIのトレンドを分析したところ、UAコストに顕著な差があることが明らかになりました。エンターテインメントアプリとユーティリティアプリは低いeCPIを維持し、エンターテイメントアプリは0.46ドルから0.44ドルにわずかに減少して、ユーティリティアプリは0.21ドルから0.11ドルに減少しました。コストの低さは、これらのアプリカテゴリーには一貫した需要や幅広く関心を引く魅力があるということを示しています。

ファイナンスアプリとショッピングアプリのeCPIも低下し、ファイナンスアプリは1.21ドルから1.09ドル、ショッピングアプリは0.99ドルから0.82ドルになりました。これらのカテゴリーでは、パーソナライゼーション戦略を強化してユーザーエンゲージメントと継続率を高めることで、ユーザー獲得コストをさらに下げることができるでしょう。

フード&ドリンクアプリは、eCPIが他のカテゴリーよりも高いものの、2.69ドルから2ドルへと大幅に減少しました。これに続く書籍アプリは2.15ドルから1.71ドルに減少しました。限定特典やロイヤリティプログラムなどを導入することで、前向きなこの傾向を維持し、離脱率を最小限に抑えることに繋げられるでしょう。旅行アプリも0.97ドルから0.77ドルに低下しましたが、これについてはシーズナリティ(季節要因)が影響したと考えられます。

モバイルゲームアプリとソーシャルアプリのeCPIは低下し、ゲームアプリは1.15ドルから1.07ドル、ソーシャルアプリは1.53ドルから1.22ドルに減少しました。広告クリエイティブを改善して次世代の分析アプローチを活用することで、コストをさらに最適化することができるでしょう。

ヘルス&フィットネスアプリのeCPIはわずかに減少して0.74ドルから0.72ドルとなり、ライフスタイルアプリは1.23ドルから0.99ドルへと大幅に減少にしました。

地域・カテゴリー別データ

地域・カテゴリー別eCPI

2024年上半期で最もeCPIが高かったのは北米で、ゲームアプリは2.14ドル、ソーシャルアプリは2.15ドル、ヘルス&フィットネスアプリは1.19ドル、ライフスタイルアプリは1.43ドルでした。ユーティリティアプリは低く、0.64ドルでした。

APACのeCPIは、ゲームアプリは0.64ドル、ヘルス&フィットネスアプリは0.45ドル、ライフスタイルアプリはやや低い0.44ドルでした。ソーシャルアプリは0.51ドルと、同地域におけるeCPIの真ん中辺りに位置し、旅行アプリは同地域において最も高いコストである0.72ドルでした。eCPIが最も低かったのはユーティリティアプリで、わずか0.04ドルでした。

ヨーロッパのeCPIは、ゲームアプリは0.59ドル、ヘルス&フィットネスアプリは0.82ドル、ライフスタイルアプリは若干高い0.84ドルでした。ソーシャルアプリは1.72ドルと高く、最も高かったのは旅行アプリで2.13ドルでした。ユーティリティアプリは0.19ドルと低いeCPIを維持しました。

MENAのeCPIは、ゲームアプリは0.13ドルと非常に低く、ショッピングアプリは0.47ドル、ソーシャルアプリは0.64ドルでした。ユーティリティアプリは0.06ドルと、やはり低い数値でした。LATAMのeCPIは、特にゲームアプリ(0.17ドル)とユーティリティ(0.06ドル)が特筆した低い結果となりました。

改善のための戦略

eCPIを最適化するための効果的な活用方法

アドネットワークとクリエイティブを最適化

適切なアドネットワークを選択し、広告クリエイティブを最適化することが重要です。ABテストを行って最も効果的な広告コピー、画像、動画を見つけましょう。エンゲージメントの高いクリエイティブによって、ユーザーの関心やインストールを大幅に向上することができます。

特定のユーザー層に焦点

アプリに興味を持ちそうなユーザー層に焦点を当てましょう。ターゲット層、地域、行動データなどを活用して、ターゲットとするユーザー層を絞り込みます。ターゲティングの精度を上げると、興味を持たないユーザーに広告費用が使われることを削減することができるため、キャンペーンの効率が向上します。関心を示しているもののアプリをまだインストールしていないユーザーに対してリターゲティングを行うことも、インストール数を増やしてeCPIを下げるための費用対効果が高い戦略です。

AdjustのAutomateなら、カスタムオーディエンスの作成やセグメンテーションの自動化、オーディエンスをリアルタイムで更新することができるため、ユーザーエンゲージメントを向上させ、リターゲティングを成功させることができます。

プライバシー重視の時代において特に重要となるユーザーエンゲージメントとコンバージョンを強化するリターゲティングの力を解説する最新ガイドで、重要な戦略やインサイトをご覧ください。

機械学習の活用

機械学習アルゴリズムを使用してデータを分析し、キャンペーンを最適化することで、アプリをインストールする可能性が最も高いユーザーに広告を確実に届けられます。

AdjustのInSightは、高度な機械学習を活用してインクリメンタリティを計測し、キャンペーンを最適化します。広告の真の効果を特定して、オーガニックのカニバリゼーションを防いで広告費用の不必要な投資を回避することで、費用対効果の高いUAを実現します。

多様なマーケティングミックスを導入

App Storeのアプリページを最適化したり、ソーシャルメディアの活用やインフルエンサーとコラボレーションすることによって、ユーザー獲得キャンペーンだけではリーチしきれないユーザー層に対してアプリの認知度や魅力をさらに高めることができます。バランスの取れたマーケティング戦略がオーガニックインストールを促進し、全体的なeCPIを下げることに繋がります。

AdjustのDatascapeなら、従来のアトリビューションだけでなく、SKAdNetworkAdAttributionKitのインストールなど、さまざまなソースによるデータを統合することができるため、すべてのチャネルにわたるマーケティングパフォーマンスを包括的に把握することが可能です。一箇所に統合することによって、ダッシュボードをカスタマイズして作成して重要な指標を計測したり、リアルタイムなインサイトが得られるため、迅速な調整が可能となります。

社会的証明や時間制限のあるプロモーションを活用

ユーザーからの肯定的なレビューや評価などの「社会的証明」を広告に取り入れることで、アプリに対する信頼を高めてインストールを促進することができます。また、時間制限のあるプロモーションは緊張感を持たせられるため、インストール率を高めるのに効果的です。

質の高いユーザーを重視

アプリにエンゲージして課金などの消費行動を取る可能性がある質の高いユーザーを獲得することを優先させます。LTV(顧客生涯価値)やROAS(広告費用回収率)などの指標を使用して、UA(ユーザー獲得)のための取り組みの長期的な収益性を評価しましょう。質の高いユーザーに焦点を絞ることがeCPIの最適化に役立ち、持続的な成長と収益性を確保に繋がるのです。

インストールを促進し、ROIを最大化するための重要なインサイトはこちら(英語)からご覧ください。ターゲットを絞ったユーザー獲得戦略によってアプリをスケールアップする方法を詳しく紹介しています。

アプリの成果とユーザー行動を計測する方法については、デモをお申し込みください

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