ブログ アプリマーケターなら知っておきたいリアトリビューションベンチマーク

アプリマーケターなら知っておきたいリアトリビューションベンチマーク

リターゲティングキャンペーンの効果を理解する上で、リアトリビューションの割合を精査することは極めて重要です。指標「リアトリビューションシェア(Reattribution share)」は、リアトリビュートされたユーザーの割合に関するインサイトを提供し、アプリインストールのうち復帰ユーザーが何人かを把握するためのものです。これにより、アプリ広告主やマーケターは、リエンゲージメントの取り組みの効果を計測し、ユーザー獲得と継続率に関して、より多くの情報に基づいた意思決定を行うことができます。

この記事は、アプリ指標に焦点を当てたブログシリーズの5回目です。本シリーズではこれまで継続率セッション数顧客生涯価値(LTV)拡張インストール単価(eCPI)などのテーマを取り上げてきました。今回はリアトリビューションの割合に焦点を当て、その重要性を探り、さまざまな地域やカテゴリーにわたる業界のベンチマークを比較するとともに、リエンゲージメントやリターゲティング戦略を強化するためのインサイトをお届けします。

定義

リアトリビューションシェアとは

リアトリビューションシェアを理解するには、まずリアトリビューションの定義を理解する必要があります。

リアトリビューション とは、再インストールやアプリの再起動といったイベントを、長期間アプリを利用していなかったユーザーにアトリビュートすることです。 多くの場合、これはリターゲティングキャンペーンが成功した結果として発生します。以前アプリに関心を示していたアプリユーザーは、リエンゲージメントキャンペーンにおいて価値あるターゲットとみなされます。

リアトリビューションシェアとは、ある期間の合計インストール数に対するリアトリビューションの割合のことです。 この指標は、全体的なユーザー獲得(UA)戦略における復帰ユーザーの影響を定量化するものです。

例えば、ユーザーがアプリをインストールしてしばらくの間利用し、それからアンインストールした後、あるキャンペーンを経由してアプリを再インストールした場合、その再インストールはリアトリビューションとなります。リアトリビューションシェアはこれらのイベントを計測したもので、合計インストール数のうち、復帰ユーザーによるインストールの割合を示します。

重要性

リアトリビューションシェアの重要性

リアトリビューションシェアの数値が高い場合、リエンゲージメントの取り組みがうまく行っていることを意味します。ユーザーから共感が得られている状態で、継続率も向上します。この指標に注目することで、ユーザーが離脱に至ってしまう理由の特定が可能です。リエンゲージメントキャンペーンでこうした課題に直接対処し、アプリの魅力をさらに高め、定着率を向上させることができるのです。

多くの場合、既存ユーザーのリターゲティング(および獲得)は、新規ユーザーを獲得するよりも費用対効果に優れています。これらのユーザーはすでにブランドを認識しているため、効果的にリエンゲージメントを行うことでアプリに戻ってくる可能性が高まります。ユーザー復帰率の向上に取り組むことで、ロイヤリティの高いユーザー層を素早く構築し、より少ないマーケティング予算でより良い結果を得て、アプリの長期的な成功を促進することができます。

計算式

リアトリビューションシェアの計算方法

では、リアトリビューションシェアの計算方法を紹介します。まず、特定の期間中の合計インストール数を把握する必要があります。これには新規インストールと復帰ユーザーのインストールの両方が含まれます。次に、同じ期間内のリアトリビューション数を計測します。リアトリビューションシェアの計算式は以下の通りです。

リアトリビューションシェア =(リアトリビューションの数)/(合計インストール数)

例えば、合計インストール数が1,000、アトリビューション数が700の場合、リアトリビューションシェアは次のようになります。

700/1000 = 0.7

Adjustの計測アプローチでは、リアトリビューションの比率はX:1で表されます。例えば、リアトリビューションシェアが0.7:1の場合、インストール数100あたりのリアトリビューション数は70となります。

リアトリビューションシェアを計算するのは簡単ですが、それには必要なデータを正確に収集する計測のメカニズムが求められます。さらに、有意義なインサイトを取得し、どのキャンペーンが最も多くのリアトリビューションを促進しているかを定期的に分析するために、分析に適切な期間を選択する必要があります。

ベンチマーク

優れたリアトリビューションシェアとは

リアトリビューションシェアを分析する前に、インストール数のトレンドを理解することが不可欠です。そのトレンドから広範なコンテキストが得られ、データを正確に解釈するためのベースラインとなります。これらのトレンドから季節的、周期的なパターンが明らかになり、リエンゲージメントキャンペーンがどれだけ効果的に以前のユーザーを呼び戻し、アクティブユーザーへのコンバージョンを促したかを評価することができます。

2023年1月〜2024年6月までの18ヶ月間、アプリインストール数の世界的なトレンドは、増減はあるものの比較的安定しています。2023年1月は、2023年平均に比べてインストール数が8%増加するなど、高いパフォーマンスを見せています。2月にはインストール数が4%減少しましたが、その後2023年7月にピークを迎え、2023年平均に比べて8%増となりました。2024年上半期にはインストール数がわずかに減少し、2023年上半期と比較して4%減となっています。

2023年の全体的なリアトリビューションシェアは、0.021〜0.022あたりを推移し、比較的安定しています。一般的に、インストール数が増加するとリアトリビューションシェアは同じままであるか、わずかに変動するだけでした。例えば、2023年1月や2023年7月など、インストール数が増加した月では、リアトリビューションシェアは約0.021と安定しています。興味深いことに、2023年2月はインストール数は減少しているものの、リアトリビューションシェアは0.022に増加しました。

2024年1月にはインストール数が増加した一方で、リアトリビューションシェアは、2023年12月に0.02から0.018に減少しています。つまり、この時点では、より多くの費用が新規ユーザー獲得に割り当てられていたことがわかります。2024年6月、全体的なインストール数が減少したにも関わらず、リアトリビューションシェアは約0.02にまで回復しました。

このデータは、インストール数が減少しても、リアトリビューションは安定している、あるいは増加していることを示しています。オーガニックユーザーが戻って来た、あるいはリターゲティングキャンペーンが縮小された結果だとしても、多くの場合、リアトリビューションされたユーザーには非常に高い価値があるため、インストール数の減少が必ずしもパフォーマンスの低下につながるとは限りません。

地域別データ

地域別 リアトリビューションシェア

Adjustのデータによると、リアトリビューションシェアの中央値は複数地域にわたって比較的安定していますが、世界的に見た新規ユーザー / 復帰ユーザーの割合は若干異なります。APACとヨーロッパでは、リアトリビューションシェアは2023年が0.022、2024年上半期が0.021でした。

LATAMは、2023年から2024年上半期にかけて0.021という一定の割合を維持した一方で、全地域で最も割合が大きかったのはMENAで、2023年は0.025、2024年上半期は0.023という結果となりました。北米では、リアトリビューションシェアは2023年が0.021、2024年上半期が0.02でした。

カテゴリー別データ

カテゴリー別 リアトリビューションシェア

さらに、2023年と2024年上半期の世界のリアトリビューションシェアをカテゴリー別に分析したところ、さまざまなアプリカテゴリーにおけるユーザーのリエンゲージメント数に大きな違いがあることが明らかになりました。

ショッピングアプリのリアトリビューションシェアは、2023年の0.204から2024年上半期には0.231と、大幅に増加しています。調査によると、年末シーズンが過ぎても消費者の関心は依然として高く、ギフトカードの利用、セールでの買い物、ロイヤリティプログラムへの登録といった欲求がその原動力となっています。ユーザーがお得な情報やリワードを求めることでリアトリビューションが増加するため、これらの要因はユーザーをショッピングアプリに呼び戻すことにつながります。

フード&ドリンクアプリは、2023年の0.159から2024年上半期に0.134に減少したものの、高いリアトリビューションシェアを維持しています。生鮮食品デリバリーアプリのモデルにはリターゲティングが欠かせません。ユーザーに再注文を促すことがビジネスにとって不可欠であり、非常に効果的です。これにより顧客のロイヤリティと継続的なエンゲージメントが高まり、アプリの全体的な成功に貢献します。

トラベルアプリは、2023年は0.033で安定しており、ファイナンスアプリは2023年の0.033から2024年上半期には0.032に減少しました。ソーシャルアプリは、2023年の0.03から2024年上半期には0.032とわずかに増加し、安定的かつ効果的なリエンゲージメントが実施されたことを示しています。

対照的に、ライフスタイルアプリのリアトリビューションシェアは、2023年の0.031から2024年上半期は0.029に減少しました。エンターテイメントアプリも、2023年の0.024から2024年上半期には0.017に減少しており、最も成長を促進しているのは新規獲得であることがわかります。

ゲームアプリも同様に、2023年の0.017から2024年上半期には0.016とわずかに減少しています。ヘルスケア/フィットネスアプリは、2023年の0.017から2024年上半期には0.015に減少しました。また、ユーティリティアプリのリアトリビューションシェアは、両期間で最も低い0.008(1%未満)となりました。

地域・カテゴリー

地域別・カテゴリー別 リアトリビューションシェア

ショッピングアプリカテゴリーを見ると、リアトリビューションシェアが最も大きいのは北米で、2024年上半期が0.341と、すべての地域とカテゴリーで一位となりました。MENAの割合は0.306で、ヨーロッパが0.284となっています。

フード&ドリンクアプリの割合は地域によって大きく異なります。割合が最も大きいのはLATAM(0.202)で、それにヨーロッパ(0.176)、北米(0.146)が続く結果となりました。

ファイナンスアプリでは、北米が0.089と最も割合が大きく、次いでヨーロッパが0.057となっています。

エンターテイメントアプリで最もリアトリビューションシェアが大きいのはLATAM(0.029)です。ゲームカテゴリーでは、北米とAPACが最も大きな割合(0.02)を記録し、戦略としてリエンゲージメントとリターゲティングが重視されていることがわかります。

トラベルアプリの割合が最も大きいのはヨーロッパとMENAでそれぞれ0.04、0.044を記録しました。一方で、ソーシャルアプリはヨーロッパとAPACが最も大きい割合(それぞれ0.042、0.039)を占める結果となっています。

ヒント

リターゲティングとリエンゲージメント戦略を改善する方法

リアトリビューションシェアを増やしたいマーケター向けに、リターゲティングの取り組みとリエンゲージメント戦略で最善の結果を得るためのベストプラクティスをまとめました。

iOSアプリのオンボーディングを最適化してオプトインを確保する

AppTrackingTransparency(ATT)の導入により、iOSユーザーはアプリのトラッキングを許可または拒否するかについて、プライバシー設定をより自由にコントロールできるようになりました。高精度のリターゲティングに必要なデータを収集するには、オプトイン率を高めるための初期段階での最適化が不可欠です。このファーストパーティデータは、匿名化された幅広い集計データからユーザーやコホートに対してリターゲティングキャンペーンを実施するのに役立つAIおよびMLモデルにも役立つ情報を提供します。

ヒント:AdAttributionKitを使うことで、トラッキングに同意していないiOSユーザーのリターゲティング(リエンゲージメント)も可能になります。

頻度と期間を最適化する

リターゲティング広告の頻度と期間の適切なバランスを見つけることが重要です。広告が過剰だとユーザーが苛立ちを感じることがあり、逆に広告表示が少なすぎると、意図した効果を得られない場合があります。広告の表示頻度やキャンペーン期間をテストして、オーディエンスを圧倒したり離脱させたりせずに、効果的な可視性を保つための最適な設定を見つけましょう。

明確な目標とパフォーマンス指標を定義する

リターゲティングキャンペーンを開始する前に、目標とキーパフォーマンス指標(KPI)を設定することが不可欠です。アプリ内購入を増やす、ユーザーエンゲージメントを高める、アプリのセッション数を増やすなど、目標に合わせて具体的なターゲットを設定することがキャンペーン戦略の指針となり、効果の計測に役立ちます。こうすることで、リターゲティングの取り組みに注力し、全体的なビジネス目標に沿ってマーケティングを行うことができます。

広告とメッセージをパーソナライズ化する

リターゲティングにおいては、パーソナライゼーションが重要です。ユーザーが以前に興味を示した製品やコンテンツを強調する魅力的なリッチメディア広告フォーマットを使用し、ユーザーのニーズや好みに合わせた効果的な行動喚起(CTA)を作成しましょう。パーソナライズされたメッセージは、広告の関連性と効果を大幅に高め、リエンゲージメントや再アトリビューションの可能性を高めます。

アプリのオンボーディングプロセスを見直す

スムーズで直感的なオンボーディングプロセスは、離脱率を低下させ、ユーザーにアプリの使い方を理解してもらうために非常に重要です。画面の数、ナビゲーションチュートリアルの有無、新規登録画面のタイミングなど、オンボーディングプロセスのさまざまな側面をABテストすることで、ユーザー体験を最初から最適化することができます。

テストと最適化を継続する

リターゲティングキャンペーンの効果を最大化するには、継続的なテストと最適化が不可欠です。多岐にわたる広告フォーマット、クリエイティブ、メッセージ、オーディエンスセグメントを試すことで、エンゲージメントの低いユーザーから最も共感を得られるのはどのような広告かを特定することができます。キャンペーンのパフォーマンスを定期的に分析し、データ主導の調整を行うプロセスを繰り返し、常により良い結果を目指しましょう。

Adjustを使えば、偏りのない包括的なアナリティクスとレポートに基づいて、自信を持ってリターゲティング・リエンゲージメント戦略を強化することができます。すべてのキャンペーンのインストールとイベントをアトリビュートできるMeasure、リアルタイムのインサイトとデータを提供し、迅速な最適化を可能にするAnalyzeなど、高いパフォーマンスを誇るAdjustの次世代計測ツールを活用して、アプリの成長目標を達成しましょう。

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